家で過ごす時間が増えた今、庭を人工芝にリノベーションする人が増えています。
そこで活躍しているのが「人工芝施工」会社です。
もちろんDIYで人工芝を敷く方はたくさんいますが、新築のお庭に施工する方や、高齢で自分では施工できない方、ドッグランとして使うためしっかりした人工芝が欲しい方など、目的は様々ですが多くの需要があります。
では、人工芝施工の仕事とは具体的に何なのでしょうか?
「人工芝を敷くだけでしょ」とお考えの方もいるかもしれませんが、意外と土木関係のスキルが必要だったり、会社によっては庭全体を任せられるので、エクステリア関係の知識が必要だったりします。
本記事では、ニッチ産業ではあるものの、今後大きく成長が見込まれる人工芝施工の仕事についてご紹介していきます。
身に付くスキルもご紹介するので、転職先候補として調べている方も参考にしてみてください。
人工芝施工ってどんな仕事?
人工芝施工の仕事は、「庭やグラウンドに人工芝を施工する」仕事ですが、施工先は一般家庭の庭の他、保育園や商業施設、駐車場、サッカーコート、テニスコートと実に様々です。
サッカーコートなどは、本番試合に近い環境で練習できるように導入する学校も増えています。
地面に敷く他に、バルコニーや屋上に敷くケースもあります。
人工芝を敷く目的は、景観以外に雑草対策、水はけ対策など様々です。
子供が遊ぶスペースでは、クッション効果による怪我対策を目的に人工芝施工をされる方もいらっしゃいます。
色々な場所に様々な目的で施工されている人工芝ですが、施工手順は地面の場合とコンクリートの場合で異なり、それぞれ必要な知識も異なります。
人工芝施工の手順(土の地面に施工する場合)
土の地面に施工する場合、次の4工程を経て完成になります。
- 除草
- 転圧
- 防草シート敷き
- 人工芝敷き
①除草
人工芝を施工する前に、きれいな下地を作る必要があります。
そのためにまずは生えている雑草をひたすら抜いていきます。
天然芝から人工芝に敷き替える場合は、強く根付いた芝を剥がすため表面の地面ごと削っていくため、場合によってはユンボを投入することもあります。
②下地整地
雑草を取り除いたら、道路にも使われる路盤材を入れて転圧していきます。
特に整地をしていない限り、いくらしっかりした地面でも雨や年月の経過によって少しずつ凹んだりしていくものです。
この凹みが人工芝にとっては命取りとも言え、水たまりができると見た目が悪いだけでなく、ずっと濡れたままになるためカビが生えてしまいます。
逆に路盤材を入れて転圧していれば、10年以上も綺麗な芝生を保つことができます。
人工芝施工はプロとして仕事をしなくてはならないので、ここはDIYの人工芝施工と大きく異なる点です。
路盤材の転圧が終わったら山砂で細かい修正をしつつ、平らになるように均していきます。
この際、目に見えないくらい微妙に傾斜をつけることで水の流れを作り、水はけが良くなるようにしますが、これは長年の経験を積まないと習得できる技ではありません。
③防草シート敷き
整地作業が終わったら防草シートを敷きます。
防草シートとは太陽の光を遮って地面に当たらないようにするもので、雑草の種の発芽や成長を防ぎます。
④人工芝敷き
いよいよ人工芝を敷いていきます。
ロール状に丸まった人工芝は意外と重く、元に戻ろうとする力を抑えながら敷いていくので大変な力作業です。
また、室外機や物置などの障害物を避けるように敷くので、隙間ができないよう余分な場所を几帳面にカットしていきます。
雨水桝の部分も丸くくり抜きます。
要望があればデザイン通りにカッティングも行うので、力作業が多い人工芝施工ですが、几帳面さやカッティング技術が必要になってきます。
人工芝施工の手順(コンクリートに施工する場合)
コンクリートに人工芝を施工する場合、整地作業が無い分、人工芝をそのまま敷いていきます。
ただし、地面の場合はU字ピンを打ちこんで固定しますが、コンクリートにピンは刺さらないので、専用の両面テープや接着剤を使用します。
気をつけないといけないので、ベランダや屋上の場合に、防水加工を痛めてしまわないか確認しなくてはいけません。
人工芝施工の職人になってどんなスキルが身に付く?
人工芝を敷くスキル・カッティング技術が身に付くのは当然なので、他のスキルに注目すると、お客様宅に出向いて作業をするため、まずは接客スキルが身に付くでしょう。
客商売であり、直接施主とやり取りするため、下手なことをすればクレームが入って仕事が無くなりますし、見積もりから打ち合わせ、施工から完成まで一貫して行うので、将来独立した時にどう動けばいいのか勉強になります。
また、整地作業のスキルなどは土木関係の仕事で活かせます。
ユンボなどは「車両系建設機械運転技能講習」と「小型車両系建設機械の運転の業務に係る特別教育」のどちらかの資格が必要になるので、こうした資格を取得することで将来別の仕事に活かせるかもしれません。
人工芝のカッティングで手先の器用さも上がるので、何か作る仕事も向いていますね。
会社によっては人工芝以外に造園業や外構工事を請け負っているところもあります。
そうした会社では造園技術、外構技術を取得することもできます。
このように人工芝施工と一口に言っても、人工芝を敷くだけではなく、他の職業にも通じる、実に様々なスキルが身に付けることができる、ガテン系の職種の中でも少し特殊な業種なのです。
人工芝施工会社に転職するためには、どんな資格が必要?
人工芝施工会社への転職に当たって必要な資格はありませんが、現場に移動するため普通免許が必要な会社がほとんどです。
また、次の資格を持っていると転職に有利でしょう。
- フォークリフト運転技能士
- 3級造園技能士
- 2級建築士
- 車両系建築機械運転技能講習・小型車両系建築機械
ほとんどの会社が入社してから職人を育てるつもりでいるので、あまり資格は関係ないでしょう。このように入ってから育てるスタンスの会社が多いことも人工芝業界の特徴です。
それよりも自分に向いているかどうかを重視しましょう。
人工芝施工の職人に向いている人は?
力作業がほとんどなので、体を動かす仕事が好きな方、体力に自信のある方が向いています。
また、高いカッティング技術が必要になってくるので、おおざっぱな方よりも几帳面な性格の方が向いていると言えます。
他には、チームで作業をしてくので協調性がある方、お客様と接する機会が多いので明るくコミュニケーション能力が高い方が向いていると言えるでしょう。
- 体を動かす仕事が好き
- 体力に自信がある
- 几帳面な性格
- 協調性がある
- コミュニケーション能力が高い
人工芝施工の職人に向いていない人は?
人工芝施工の仕事は繊細で、慎重さが求められるのでおおざっぱな性格の方は向いていません。
ほぼ屋外での作業が主なので、外仕事や力仕事が苦手な方も向いていません。
他は会社の方針によって求める人物像が違うので、求人票を参考にしてみてください。
- おおざっぱな性格
- 外仕事や力仕事が苦手な方
人工芝施工の職人の平均年収は?
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」には「人工芝施工」というジャンルがないので、造園業や外構工事会社が人工芝も扱っているのでこの2つを参考にしてみます。
令和3年、造園業の平均年収は344.1万円、求人賃金は月額24.8万円、建設・土木作業員の平均年収は396.1万円、求人賃金は月額25.7万円です。
ここで人工芝職人の年収を約344万円~396万円と仮定します。
平均年収.JP によれば2020年度の平均年収は436万円、年収中央値は273〜360万円でした。
人工芝職人の平均年収は日本の平均は届かずとも中央値を大きく超えているため、給与は高い方だとわかります。
人工芝施工の職人はガテン系の職種の中でも、独立に向けて必要な数多くのスキルを習得できる仕事!
人工芝施工の仕事についてご紹介してきましたが、人工芝施工の仕事はガテン系と言われる職種の中でも、比較的独立に向けて動きやすいスキルを手にできる職種と言えます。
ニッチですが意外と数多くのスキルが身につく点が最大の魅力と言えるでしょう。
そのため、「将来自分の会社を持ちたいという」野心家の方にもおすすめの仕事かと思います。
また、この仕事の一番の良さは「直接お客様の笑顔を見られる」ことです。
自分の施工した芝生で笑顔になってもらえる瞬間に立ち会えるのは、何よりのやりがいではないでしょうか。
自分に向いている仕事なのか、将来身に付けていたいスキルを習得できるのか、満足できる給与なのか、そして仕事に満足できるやりがいがあるのか、これらをトータルで考えてやってみたい仕事かどうかを判断してみてください。